病院勤務の医師が考えるべきこと

病院勤務の医師が考えるべきこと

患者さんが「こんにちは」と診察室に入って来た時から、診察は始まっています。

いつもと比べて表情はどうだろうか、いつもはニッコリと笑顔で入って来られるけど今日はなんだか辛そうだな、歩き方はどうだろうか、肩にかけたバッグをかごに置く様子はどうだろうか等、名医と呼ばれる内科医はこれらを観察して、些細な変化も見逃しません。

そして、パソコン画面ばかりを見るのではなく、患者さんと視線を合わせて話をします。患者さんから信頼され心を開いてくれなければ、患者さんから情報を聞き出すことはできません。

また、いくら患者さん想いの医師であっても知識が乏しいと、正確な診断や正確な治療には結びつかず患者さんを苦しめることになります。

例えば、関節痛と聞くと整形外科かと思うかもしれませんが、関節が痛くなる病気は200以上もあります。
「整形外科で見て貰って下さい」ではダメです。
内科的な疾患が隠れていないか、早急に治療が必要な疾患が隠れていないか、見分ける必要があります。

めまいの原因も、耳鼻科的なものとは限りません。

そのためには、内科はとても広い知識が必要となります。他の診療科の知識も幅広く持ち合わせている必要があります。

そして、患者さんを苦痛から解放しQOLを上げるには、薬の処方の腕も大きく関わってきます。
強い薬を使ってスパッと治したほうが患者さんにとっては効いたという実感が強く、名医のように映りますが、リスクとベネフィットを天秤にかけて処方薬やその投与量を考えなければなりません。

病気は軽減したけれど副作用に苦しんでいたのでは、本末転倒でしょう。

医師は重篤な副作用だけを考えがちですが、抗がん剤の副作用で女性患者さんが苦痛なことの1位にあげるのは、吐き気や倦怠感ではなく、脱毛です。
ステロイドを服用中の患者さんが気にすることも、感染症や骨粗しょう症ではなくムーンフェイスです。80歳のおばあさんでも気にします。

そういったことも、医師はよく理解しておく必要があります。

名医と呼ばれる内科医は、こういった患者さんの心の声にも耳を傾けて聴くことができる医師です。

ムーンフェイスが嫌でステロイドを勝手に中止してしまい、また治療を1からやり直しすることになってしまったのでは、名医とは言えないでしょう。

病気の理解や治療法の知識だけではなく、こういった患者さんの心理に関するような些細な知識も重要です。

名医と呼ばれる内科医は些細なことにも、目を光らせて対応しています。

内科はとても幅広い知識が必要です。

時に交通事故に遭った患者を診ることあって患者の代理弁護士が相談にくることもあるでしょう。また、専門医部会単独セミナー・トレーニングに参加しなければいけないこともあるでしょう。

しかし、幅広い知識を持ち、豊かな心で患者と心を通わせる能力をもった医師こそ、名医といえるのではないでしょうか。